木の根元でひっそり春を待つ生き物たち
昆虫やクモなどの小さな生き物たちの姿があまり見られなくなってしまう冬。公園の大きなトウカエデの木の根元をよく観察してみました。そこにはいろいろな生き物たちが潜んでいました。
この記事の目次
- 落ち葉をめくると見つかった生き物
- オカダンゴムシ Armadillidium vulgare
- フトミミズの仲間 Megascolecidae sp.
- ハンゲツオスナキグモ Steatoda cingulata
- マルシラホシカメムシ Eysarcoris guttigerus
- ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius の蛹の殻
- 幹の皮の間に潜んでいた生き物
- ナメクジの仲間 Stylommatophora sp.
- ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni
- 近くを動き回る天敵たち
落ち葉をめくると見つかった生き物
オカダンゴムシ Armadillidium vulgare
落ち葉と腐葉土の間で集団で越冬していました。冬も夏も落ち葉の下はお気に入りの場所のようです。ちなみに、オカダンゴムシの寿命が意外と長く、3-5年と言われています。
フトミミズの仲間 Megascolecidae sp.
木の根元の落ち葉の中は、適度に湿度が保たれているのか、何匹も出てきました。
ハンゲツオスナキグモ Steatoda cingulata
落ち葉の間に隠れていました。発見したときは、足を縮めた状態でしばらく全く動きませんでしたが、数分後急に動き出し、急いで落ち葉の間に隠れました。おそらく死んだふりをしていたものと思われます。冬季でも天気の良い昼間には、かなり早く動くことができるようです。
マルシラホシカメムシ Eysarcoris guttigerus
イネ科やキク科、マメ科などの植物を吸汁するカメムシの仲間で、国外では、朝鮮半島や台湾、中国、インドに分布し、国内では本州以南に生息します。木の根元の落ち葉をめくった時に見つかり、歩いて逃げていきました。
ツマグロヒョウモン Argyreus hyperbius の蛹の殻
今回見つけたものは、残念ながら中身がありませんでしたが、ツマグロヒョウモンは、蛹や幼虫の形で越冬します。蛹は、地中ではなく木の枝などにぶら下がるように作られるため、今回見つけたものは、羽化後に地面に落ちたものと思われます。
幹の皮の間に潜んでいた生き物
ナメクジの仲間 Stylommatophora sp.
トウカエデの樹皮の隙間に何匹もいました。根本に近い木の皮の隙間は、外敵から隠れることができ、湿度も保たれ、ナメクジに人気の越冬場所のようです。
ヨコヅナサシガメ Agriosphodrus dohrni
ヨコヅナサシガメは、サクラやケヤキ、クスなどの大木の樹上で生活します。春から夏頃の成虫の時期には、単独で木の高いところにいますが、冬季は幼虫の状態で越冬し、地面に近いところに集合している様子がよく観察されます。なお、本種はトウカエデではなく、サクラの木の地面に近いところ(地面から50 cmほど)で見つかりました。
近くを動き回る天敵たち
公園では、ジョウビタキ Phoenicurus auroreus やハクセキレイ Motacilla alba がウロウロしていました。変温動物である昆虫やクモなどの生き物は、気温が低いと早く動けません。そのため、そもそも天敵に見つからないことがとても重要です。木の皮の間や落ち葉の下は、地表を歩き回って獲物を探す鳥類などの天敵に見つかりにくいため、多くの小さな生物にとって格好の越冬場所になると考えられます。